発達障害の1つに分類される注意欠如多動症(ADHD)は、子どもに特有と思われがちですが、中には大人になってもその特性をもち、日常生活や職場で様々な困り事を抱えている方々がいることがわかってきました。また近年、メディアでも大人の発達障害が取り上げられることが多くなり、広く知られるようになってきた一方で、その診断を受けてからの対応は、まだ確立されていません。
そこで、大人になってADHDの診断を受けた方々が、医療者と相談しながら今後の対処法・治療法を一緒にみつけるための手引きを開発することにしました。
①インタビュー調査
まず、大人になってADHDの診断を受けた方々にお話しをうかがいました。その結果、当初は診断に否定的でしたが、関連する情報を探し求め、自らADHDについて学ぼうとしていました。また長年の困難の理由がわかって安堵する一方で、アイデンティティの揺らぎも抱えていました。これらより、診断後はADHDに関する適切な情報をご本人と共有しながら、今後の方針を一緒に検討していくことが大切であると考えられました。
②手引きの開発研究
①を受け、まず、医療者と相談しながら今後の方針を決めるための手引きを試作しました。試作版は、大人のADHDの特徴と経験しやすい困り事、および自分で取り組む対処法の例を掲載し、さらに対処法に加えることのできる選択肢として、薬を飲む場合と飲まない場合の長所・短所を比較しました。つぎに、この試作版について、当事者と医療者に、読みやすさや理解しやすさを評価してもらい、それをもとに修正し、手引きを完成させました。最後に完成版について、外来でADHDの診断を受けた直後の方々に、医師と今後の方針を決める話し合いの場面で活用してもらいました。その結果、ADHDに関する知識が増え、決定に関する葛藤が減り、この手引きの有用性を確認することができました。
医療者との対話のツールとして、この手引きを広く知っていただき、活用いただくための取り組みを進めています。